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コラム

冬の花園を彩る紺と赤の伝統校
常翔学園が目指す全国制覇の道

第105回全国高校ラグビーの大阪府予選の決勝3試合が11月16日、東大阪市花園ラグビー場で行われ、第2地区は常翔学園が2大会連続43度目の花園切符をつかんだ。52ー7で関大北陽に圧勝。第1地区は東海大大阪仰星が80ー5で近大附属を寄せ付けず、第3地区は大阪桐蔭が38ー0で大阪朝鮮に勝った。大阪の3地区とも決勝は大差がつき、予選参加が1校だけの島根は戦わずして石見智翠館が花園へ。一方で奈良決勝は御所実と天理が7-7の同点で両校優勝となり、抽選の末に御所実業が4大会ぶり15回目の花園出場を決めた。

 

伝統の継承

40年近くもチームと共に歩む野上友一さん

 

花園ラグビー場の第1グラウンド片隅に、決勝を戦い終えた常翔学園のメンバーが集まっていた。

少し離れたところから彼らを見守っていたのが、元監督で現在はラグビー部GMを務める野上友一さんだった。

選手たちへひとこと、ふたこと、声をかける。

いい時も、そうでない時も、紺と赤のジャージーとともに歩んできた。

だからこそ、目を細めるその姿は、とても嬉しそうだった。

「ホッとしましたね。やっぱり花園に行って当然だと思われているからね」

前身の大阪工大高校時代から、このチームに身を捧げてきた人である。

前任の荒川博司さんから監督を受け継いだのが、今から35年前のことだった。

コーチ時代の1988年には昭和天皇崩御により、茗溪学園(茨城)との決勝戦が行われず両校優勝になったこともある。

監督としての初優勝は阪神淡路大震災に見舞われた1995年度。

大阪予選は勝って当たり前ー。

そう思われるプレッシャーは常に抱えている。

2年前に途絶えた連続出場、昨年度は花園4強

2年前、2023年度は春の全国選抜大会で4強入りしながらも、秋の花園予選は大阪決勝で東海大大阪仰星とあたる不運もあり、連続出場が途絶えている。

その直後にチームを率いることになったのが、野上さんの教え子でもあるOBの白木繁之監督だった。

関大北陽との決勝戦は前半6分にプロップの古沢晴也(3年)が先制トライを挙げ、その8分後に今度はフランカーの田中蓮聖(3年)が続いた。

WTB池田大翔、伊勢亀大悟(ともに3年)の両ウイング(WTB)もトライを決めて突き放した。

就任後、2大会連続で花園へ導いた白木監督は「最後まで(集中力を)切れずにやれたのは良かった」としながらも「まだ課題が残っているので、大会までにもう1度、鍛え直します」と気を引き締めた。

フッカーの岡本慶次主将(3年)は「前半からいい流れで自分たちのペースに持っていくことができました。接点、フィジカルにはこだわってきたので、そこが1番成長したと思います」と振り返りつつ「目標は全国制覇です」と言い切った。

前回大会の花園は準決勝の“大阪決戦”で26ー29で東海大大阪仰星に惜敗。

2012年度以来の全国制覇へ。

大阪工大高校から古き良き伝統を受け継ぐ紺と赤のジャージーが、この冬もまた花園を彩る。

(取材=SUNLOGUE編集部)

 

野上友一さんの経歴と講演依頼はこちら>>

高﨑利明さん(伏見工業ラグビー部元監督)の経歴と講演依頼はこちら>>

 

 

(花園出場を決めた東海大大阪仰星のメンバー)

(大阪桐蔭のメンバー)

 

 

問われる地域格差

戦わず花園出場、抽選で涙のむ天理
改革が急務‥高校ラグビーの不条理

⚪︎‥今年度の島根は県予選の参加が1校だけとなり、石見智翠館が戦わずして全国大会出場を決める異例の事態になった。
全国制覇を狙える強豪がひしめく大阪でさえ、決勝は3地域とも大差がつく結末。その中でも、大阪桐蔭ー大阪朝鮮の決勝はまだ引き締まった内容となり、大阪桐蔭の綾部正史監督は「ひたむきに真っ向勝負をしてくる相手で、ラグビーの原点を学べる貴重な60分だった。この予選で対戦できる最高の相手」と大阪朝鮮に感謝していた。
奈良予選は7-7の同点で両校優勝。抽選の末に天理が涙をのみ、御所実業が花園へ進む劇的な展開。
京都予選は京都成章が22ー12で京都工学院(旧・伏見工業)に勝ち、2大会ぶりの花園を決めた。
奈良、京都は決勝に進んだ2校ともに全国大会で上位に進む可能性のある実力校。高校ラグビーは地域格差が顕著になっており、今後さらに大会のあり方が問われそうだ。