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コラム

日本ハムの「人材発掘」 潜在能力を見極めるスカウトの眼力

高評価の理由「足りないものを改善する取り組みができる」

プロ野球・北海道日本ハムファイターズの選手獲得への道筋はプロスポーツ界だけでなく、あらゆる分野の「人材発掘」において参考になる。

10月27日、ドラフト会議で2位指名した大阪学院大学のエドポロケイン外野手の指名挨拶を取材した際、日本ハムのGM補佐兼スカウト部長を務める大渕隆さんの言葉は印象的だった。

「技術はまだ足りないです。ただ、足りないものを改善する取り組みができる選手だということを、担当(スカウト)の熊崎から報告を受けている。それを信じて本来は下の評価だったのを(2位指名に)上げました」

数字では表せない評価。

事実、ケイン外野手は大阪学院大学が所属する関西六大学野球で4年間、個人タイトルはなく、ベストナインにも選ばれていない。

ナイジェリア人の父を持ち、身長190センチという恵まれた体格はある。

それでもプロの世界は結果こそが全てであり、体格だけで生きていける世界ではない。

違った見方をするならば、今、結果が出ていなくても、将来的に結果を出すまでの「努力」ができる愚直さがあるかどうかー。

日本ハムのスカウトが見極めたのは、まさにそこだった。

伸びる人材に必要な要素とは? 怠らない努力、愚直で素直な性格

大渕さんは、こんなエピソードを明かしている。

「春に見た時はまだまだでした。秋になり、目に見えない評価が上がってきた。トレーニングルームに毎日いるのは彼だった。もともと体格のある選手というのは、どうしても(地道な)トレーニングを怠ることがある。しかし、彼は違いました。そういう(試合の結果ではない)目に見えない姿勢を評価している」

今後、どれだけ成長し、チームに貢献できるのか。

“伸びしろ”の部分こそが人材発掘において最も重要でありながら、どうしても見逃してしまいがちなポイントでもある。

伸びる人材に必要な要素の1つが「素直さ」であろう。

大渕さんは「考える、人の話が聞ける。フィジカルだけでなく、彼の野球に取り組む姿勢には成長する要素があると判断している」と明かしている。

大阪学院大学の中村良二監督は、守備位置につく際の全力疾走を言い続けたという。

「野球以前のことです。たらたら歩いていては、ここぞという時に(力が)入ってこない。学生らしく、手は抜かない。こういう子にプロになって欲しいと思われる選手にしたかった」

指名挨拶を終えたケイン外野手は、笑いながらこんな話を聞かせてくれた。

「ドラフトの前は良くて3位か4位だと思っていたので(2位指名に)びっくりしました。大学4年間はよく叱られたりしたんですけど、へこたれないように頑張ってきた。守備位置までの全力疾走は褒めてもらえました。大学2年の夏に全力疾走をしていなくて、スタメンから外されたことがあるんです。『プロになりたいなら(全力疾走を)やり続けろ。そういうところを、みんなは見ているから』と言われていました。これからも誰よりも努力をする選手になります」

時間をかけて選手を追い続け、「今の結果」だけにとらわれるのではなく、性格やその選手の潜在的な能力まで見極めた日本ハムのスカウト。

そこには「人材発掘」における大きなヒントが隠されている。

【セミナー、企業内研修テーマ】 人材発掘、人材育成