早稲田ラグビー、「荒ぶる」への道
代表FB矢崎由高が見せた圧巻の走力
ラグビーの全国大学選手権は2026年1月2日に東京・国立競技場で準決勝が行われる。2019年度以来、6大会ぶりの大学日本一を目指す早稲田大学(関東対抗戦3位)は帝京大学(対抗戦4位)と対戦する。準々決勝(12月20日)の天理大学(関西1位)戦を26-21で勝利。今季は対抗戦の力が拮抗しており、大会を通じてどこまで成長できるかが大学日本一の行方を左右するだろう。大学ラグビー界のスター、日本代表のFB矢崎由高(3年=桐蔭学園)を擁する早稲田は「荒ぶる」を奏でることができるのか。(SUNLOGUE編集部)
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関西王者天理大を5点差で振り切り4強
大田尾監督は「矢崎はまだまだやれる」
激戦が繰り広げられた大阪・ヤンマースタジアム長居で、最後にミックスゾーン(取材エリア)に姿を見せたのが矢崎だった。
大勢の報道陣が彼を囲む。
「接戦を制することが自信につながると思います」
それが、まず口にした言葉だった。
今季の天理大学は関西リーグを全勝優勝。京都産業大学との最終戦では47ー15の大差をつけた。
主将のSO上ノ坊駿介(4年)を中心にした組織的なディフェンスと、安定したセットプレーは、関東対抗戦の上位校と遜色ない力を持つと見られていた。
準々決勝屈指の好カードを、早稲田は26ー21で勝利した。
圧巻は12ー14で迎えた前半31分のプレー。
自陣22メートル付近でボールを持った矢崎は、右へ重心を傾けながら、左へ切り返し2人を抜き去った。
両手でボールを持つことで、キックとランの両方の選択肢が生まれ、相手の足が一瞬止まっている。
一気に加速して敵陣に入ると、今度は大きく右へ流れるようなランニングコースをとった。
対面した相手FBの重心が完全に右に傾くのを確認すると、内側へ方向転換。
細かい歩幅のステップでまた右へ行くふりをしてフランカーを交わし、フォローに来ていたSH糸瀬真周(4年=修猷館)へラストパスを送りトライに結びつけた。
大学ラグビー界に久しぶりに現れた「本物のスター」を目の当たりにした会場は、ため息のような驚きの大歓声に包まれた。
「まあ、あのランは、スペースが空いたところに走るのは一貫してやっていることなので」
淡々とそう振り返りつつ、80分間トータルとしての自己評価は厳しめだった。
「良くなかったです。ミスも何本かありましたし、プレッシャーは予想していた中でそれに負けてしまった。あまりいいとは言えないです」
勝ち越しのトライを演出し、後半26分には自らのトライとCTB野中健吾(4年=東海大大阪仰星)のゴールも決まって12点差まで広げた。
それでも試合後すぐ、大田尾竜彦監督と試合の反省をしていたのだという。
会見で同監督は「矢崎のカウンターは大きかったと思います」としながらも「持って走るのは良かったが、ミスも多かった。まだまだやれる」と指摘した。
これからの日本を背負う選手としての期待があるからこそ、褒めるだけでなく、あえて厳しめの評価をしていたのが印象的だった。
「大阪の悪夢」を振り払った
早稲田にとっての「大阪」は、忌まわしき悪夢を払拭するための場所でもあった。
2年前、同じ準々決勝。
舞台は今回のヤンマーのすぐ隣にあるヨドコウ桜スタジアムで行われた京都産業大学戦で歴史的大敗(28⚫︎65)を喫している。
まだ1年だった矢崎は14番で先発し両チーム最初のトライを奪ったが、その後は相手に9つものトライを次々と許した。

大田尾監督(写真右)は「細かい話になりますが」と前置きした上で、このように話した。
「2年前、バスで(会場に)向かう時にルートを間違えて、到着がだいぶ押してしまった。アップができなかったり、試合前の準備の段階で冷静にさせる声がけもできていなかった。それを踏まえて、今回はどんなことがあっても動じないシミュレーションをさせて臨みました。いつも通り、選手をグラウンドに立たせることに注力した」
後半30分に天理大学SO上ノ坊のトライとゴールで21ー26の5点差に迫られる。
残り時間3分ほどになり、相手の圧力を受けて自陣深くまで攻め込まれた。
同じ会場で行われた第1試合も同じような展開で、5点差を追いかけた京都産業大学(関西2位)がラストプレーでトライとゴールを決めて26ー24で東海大学(関東リーグ戦1位)を大逆転していた。
関西のファンはその再現を祈り、早稲田のファンは逃げ切りを願った。
最後は早稲田の力が上回り、ノーサイドの笛が冬空に響いた。
1・2準決勝は帝京大との再戦

「僕たちは『荒ぶる』を目標にしています。この試合にかけていました。厳しい試合になることは分かった上で、声援が力になりました」
主将のCTB野中はそう語り、準決勝の帝京大学戦に向けた意気込みを問われると視線を次に向けた。
「いかに(対抗戦の)敗因を潰しながら、新たなものを出せるかだと思っています。(敵陣)22メートルラインに入ってからの遂行力、まだまだ精度は高められる。22メートルに入ってから50%から60%(の確率でトライを)取れれば自分たちのラグビーができる」
関東対抗戦(11月2日)では20ー25で帝京大学に敗れている。
ただ、その試合に矢崎は日本代表の欧州遠征のため出場していない。
「(欧州の)アウェーの中でラグビーができたのが僕にとって刺激になりました。代表の経験ができたのは大きかった。じょじょにチーム(早稲田)にも還元できている。現状に満足しているわけではないので、日々、最後までしっかり成長したいと思っています」
そう言い残すと、矢崎は報道陣の輪から離れ、仲間が待つスタジアムの外へと向かった。
昨季決勝の再戦となる帝京大学に準決勝で雪辱を果たし、決勝は再び早明戦か。
それともダークホースの京都産業大学か。
矢崎が戻ってきた早稲田は逞しさを増している。
6大会ぶりの「荒ぶる」は決して夢物語ではないだろう。
歓喜の時を、多くのファンが待ち望んでいる。

◾️全国大学ラグビー選手権大会・準決勝(2026年1月2日、国立競技場)
・第1試合 早稲田大学(対抗戦3位)ー帝京大学(対抗戦4位)
・第2試合 明治大学(対抗戦1位)ー京都産業大学(関西2位)