京産大ラグビー2年ぶり関西制覇への思い
11月30日最終節・天理大との優勝決定戦
ラグビーの関西大学Aリーグは11月30日に最終節(東大阪市花園ラグビー場)を迎え、ともに6戦全勝の京都産業大学と天理大学が優勝を懸けた大一番を戦う。28日は両校がメンバーを発表。京産大は京都市内のグラウンドで練習を公開し、元日本代表SOの広瀬佳司監督と主将の伊藤森心(4年=松山聖陵)らが報道陣の取材に応じた。
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⭐︎広瀬佳司監督の全コメント⭐︎
昨年4連覇を逃した因縁の相手「勝ちたいという思いしかない」
ー優勝が懸かる大一番でCTBに公式戦初先発となる平山直樹(4年)を抜てきした理由を教えてください
広瀬監督 ディフェンスもアタックも良くなっていて、ケガをした吉岡(佑真)と同じレベルにある。試合に出るのは初めてだと思うので、頑張って欲しい。なかなかAに上がれなかった選手ですけど、下(のチーム)でも腐らずにやってくれた。思い切って平山らしく、ディフェンスでも(タックルを)突き刺さってくれると思う。
ープロップの猿渡翔真(4年=京都成章)をフッカーで起用した意図を
広瀬監督 スクラムを重視しました。猿渡は1番(プロップ)もできるので期待しています。セットプレーで優位に立たないと天理相手には厳しいと考えて猿渡(をフッカー)にしました。私たちは常に関西で優勝を目指しているので、タイトルを取りにいきたい。セットプレーで勝負をかけたいということです。
ー天理大戦に向けた対策はいかがでしょう
広瀬監督 フォワード(FW)8人がパックになって、天理のFWとしっかり勝負をするラグビーをしていきたい。個々で見ると難しいかも知れませんが、8人のまとまりで京産らしいスクラム、モールを組みたい。今年の天理さんは充実しているので、我々はまとまってジナジー効果を生み出して、なんとかタイトルを取り戻したいと考えています。ここ(天理大戦)を目指してやってきたので、全勝でよくここまで来てくれた。
ー相手にはSOに上ノ坊駿介(4年=石見智翠館)がいますが、警戒するポイントは
広瀬監督 (上ノ坊には)思い切りプレッシャーをかけたい。スピードのあるバックス(BK)に走られるのは嫌なので、そういう場面やスペースを作らせないように、セットプレーで圧力をかけたいです。(天理大の)ボールを動かすスピードは関東(の強豪校)と同じくらいに速い。関西にはないレベルなので、あのスピードについていけるようにしたい。
ー今年の4年生のまとまりはどうでしょうか
広瀬監督 厳しい時期があっても、メンタル的に崩れることなく「もう1回やるぞ!」という思いでやっている。(主将の)伊藤、(SO)吉本らを中心に、そういう思いでやり続けてくれたことを頼もしく感じている。伊藤は素晴らしいリーダーシップを発揮して、チームを支えてくれている。昨年は中心選手に4年生が多く、そこが抜けたので、今年は厳しいシーズンになると思っていました。夏合宿も勝ったり、負けたりと不安定だった。そこから、よくここまで成長してくれたと思っている。
ーロックの石橋チューカのコンディションを教えてください
広瀬監督 体も大きくなって、リーダーシップも出てきた。彼は今年成長した選手の1人。フランカーでもロックでもどちらでも起用できるが、ロックに置いた時の(スクラムの)押しが1番いいと思っています。
ーキッカーを務めるSH高木城治(3年=東福岡)の調子がいいことについては
広瀬監督 昨年までSHを任せた土永旭(現・横浜キヤノンイーグルス)が抜けて、(代表歴のある)村田大和がケガで離脱している。彼(高木)がフル稼働して、いないといけない存在になっている。プレースキックの成功率が素晴らしく、「全部入れてやる」という気持ちが、100%、90%という高い数字になっている。
ーかつてキックの名手と呼ばれた監督ですが、アドバイスを求められることもありますか
広瀬監督 全然、聞かれないですね。彼の親と同じくらいの世代なので(広瀬監督の現役時代を)知らないんじゃないですかね?笑
ー大学選手権の組み合わせを見ると関西2位の方が準決勝に進みやすいとの見方もありますが、その点はどうお考えでしょうか
広瀬監督 大学選手権のことはまだ考えていないです。本当にこのリーグ戦を勝ちたいという思いしかない。
ー最後に。大学のグラウンド周辺で熊が出たとのニュースが流れましたが
広瀬監督 部の練習に支障はありませんでした。今のところは大丈夫です。

報道陣の取材に応じる京産大の広瀬監督
⭐︎フランカー伊藤森心(4年=松山聖陵)主将の全コメント⭐︎
言葉と体で伝える京産らしい「ひたむきさ」「泥臭さ」
ー練習後の円陣でメンバーに伝えたことを教えてください
伊藤 天理大学のキャプテンの(SO)上ノ坊は天才、僕は凡人なので、それを分かっているので誰よりもひたむきに体を張り続けるという覚悟です。中学時代から知っていて、彼が10番になってから天理のラグビーが変わって彼主導のラグビーになった。天理を分析する中で、システムも変わっているし、彼がキャプテンになって変えたんだなというのが分かる。
ーその天理に勝つために必要なことは何でしょうか
伊藤 ディフェンスで前へ出続けたいと思っています。10番が起点のラグビーになるので、天理を相手にすると受け身になってしまっているのが関西リーグの現状。彼(上ノ坊)をマークするのもそうだし、15人全員で前へ出る意識を見せようと考えています。
ー昨年は天理大との頂上決戦に敗れてリーグ4連覇を逃してしまいました
伊藤 一昨年までもチャレンジャー精神で臨んできましたが、改めて僕たちはチャレンジャーなんだということを考え直すきっかけになった。ひたむきにやり続けた方が勝つと信じています。
ー主将として意識していることはありますか
伊藤 キャプテンになって、(仲間の前で)しゃべることが多くなった。口に出したからには、やらないといけない。まずは僕が体を張らないと、みんなが付いてこないと思う。ひたむきに、泥臭いことをキャプテンとして言葉と体で伝えることを意識しています。
ー前節の関学大戦はラインアウトがうまくいかないように見えました
伊藤 関学戦のラインアウトは成功率が50%を切っていた。ただ、逆の見方をすれば、それでも勝てている(28⚪︎22)。
ー2年ぶりの関西優勝へ、勝負のポイントを教えてください
伊藤 自分たちの時間は限られている。スクラム、モールでプレッシャーをかけて、そこからペナルティーを得てPGを狙うのか。もしくは(敵陣の)奥まで入ってモール(でトライを狙う)か。キャプテンとして冷静に判断したいと思います。

天理大との大一番に向け調整する京産大のフランカー伊藤主将(右)と石橋
⭐︎公式戦初先発のCTB平山尚樹(4年=東福岡)の全コメント⭐︎
腐らずやり続けた苦労人〜応援してくれた親へ、コーチへ
ー最終学年で初めての公式戦。伝えられた時の素直な心境はどうでしたか
平山 ここかあ、天理戦なのかあ、という気持ちでした。嬉しいよりも、責任感ですね。緊張というか、責任があるという思いの方が強かったです。
ーAチームでの初先発を知ったのはいつですか
平山 水曜です。(メンバー表に)自分があった。ジュニアやコルツも(試合が)あるので、そっちだと思っていて、(最終学年の試合が)そこで終わるんだろうなと思っていました。
ー誰が1番喜んでくれましたか
平山 親は相当喜んでいました。もちろん僕も嬉しいですけれど、それよりも責任感の方が強いです。
ー試合に出れなかった時期が長かったと思いますが、出たいという思いや、腐りそうになったことはありましたか
平山 そりゃあ、出たいですよ。でも出れないからといって、腐りそうになったことはありませんでした。C(チーム)やBにいる時間が長かったですが、どのチームにいても、ずっと僕を応援してくれる人がいた。親もそうだし、出身チームのコーチや、同期もそうだし。どのグレードで試合に出ても、応援してくれる人がいたから、その人たちのために、腐ろうと思うことはなかったです。
ー高校時代は強豪校(東福岡)にいて、大学でもトップレベルで活躍したいという思いがあって、京産大を選んだと思います
平山 ヒガシ(東福岡)には僕らの代にもスーパースターがいて、僕なんかよりもすごい選手がたくさんいました。そいつらに付いていくことに必死だったので、大学に来て「何で俺が試合に出れないんや」とはなりませんでした。高校時代の花園は2、3年とベスト4。2年の時はロスタイムに仰星(東海大大阪仰星)にやられて、3年は京都成章に負けました。
ー4年間の最後のリーグ戦で、やっとつかんだ先発。ここから大学選手権に向けて「自分がヒーローになってやる!」などという気持ちはありますか
平山 それはないです。そういうことじゃない。自分がやるべきことを、自分らしくやるだけです。それがチームのためになるのなら、それでいい。「自分が1発やってやろう」とか思うのではなく、チームのためにやるべきことをやる。どのチームにいても、自分の役割を全うすることを考えてきました。今回も、やるべきことをやるだけです。
練習後に取材に応じるCTB平山。淡々と冷静に語る姿が印象的だった

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