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インタビュー

映画「チア☆ダン」に学ぶ人間形成②
「いつだって人は変われる」魔法の言葉

〈福井商チアリーダー部JETS 五十嵐裕子さんインタビュー第2話〉

福井商業高校チアリーダー部が2009年に全米チアダンス選手権を制したのは、顧問の五十嵐裕子さんが本格的に強化に乗り出してからわずか3年後のことでした。前任校では荒れた生徒を指導するなど、たくさんの経験を積んできた彼女が口にする言葉があります。「いつだって人は変われる」ー。これは普通の高校生を全米チャンピオンにまで導いた熱血教師の物語。

 

本格始動から3年で全米制覇〜取り入れた「原田メソッド」

赴任した福井商業高校は野球部が甲子園に出場するなど強豪で知られ、応援のためにバトン部があった。

その部員を中心にチアリーダー部を結成。まずは挨拶や校則を守ることを徹底する。

「映画では4~5人が辞めるんですけど、本当は25人ほどいた部員全員が辞めてしまうんです」

突然現れた熱血教師に生徒だけでなく保護者までもが反発した。

「全米制覇を目指すんだよ!」

翌春に新入生18人が入部。その子たちが2年生になると9人に減ったが、目指す道は変えなかった。

「まずは大会を見に行ったんです。私がどんなに学んでも100年かかっても(全米制覇は)無理だと感じました。前任校ではダメな先生だったので、今度はプロデューサー目線でやるしかない。経験のある先生に月1回、教えてもらうようになりました」

その人が前田千代さん(日本チアダンス協会代表理事)だった。

指導してもらうにあたり、挨拶も笑顔すらもままならない生徒に礼儀から指導した。

人間形成こそが「チア⭐︎ダン」の原点。

五十嵐さん自身も、松下電器産業創業の松下幸之助さんや、京セラ創業の稲盛和夫さんの書籍を読みふけり、アーティスティックスイミング指導者の井村雅代さんや、ラグビー伏見工業の山口良治さんらの教えから学んだという。

生徒だけでなく、指導者も成長することで、「人の心を動かす」組織ができていった。

「夢ノート」を取り入れたのもこの頃で、全米制覇という目標設定に向けて「いつ達成するか」「どうやって達成するか」を生徒に書かせることによって具体的なイメージを抱くようになる。

それは大阪の公立中学校の陸上部を全国制覇に導き「原田メソッド」で知られる原田隆史さん(原田教育研究所)のやり方を取り入れた。

バトン部をチアリーダー部に変えてからわずか3年後の2009年にフロリダ州オーランドで開催された全米チアダンス選手権で初優勝の快挙を達成する。

2017年には5連覇を達成。

人間形成を重視し、夢を現実にするまでの軌跡(プロセス)は、スポーツ界だけでなく、教育やビジネスにおいても参考になる。

ビジネスにもつながるプロセス

誰かのためにー。

それは応援から競技へと派生した「Cheer」の最大の魅力でもある。

仲間がいてこその輝きであり、支えてくれる人がいるから頑張れる。

福井商業高校チアリーダー部の副部長を務める佐々木美桜さん(3年)はこんな話を聞かせてくれた。

「先生方や家族、マネージャーがいるからこそ、私たちは踊ることができる。マネジャーは音楽をかけてくれたり、私たちのためにお茶を入れてくれるんです。マネジャーがいなければ踊れないので、マネジャーのためにいい演技がしたいなあ、って思います」

この学校を選んだのは、小学生の頃に見た映画「チア⭐︎ダン」がきっかけだった。

部長の小寺未來さん(3年)の言葉も印象的だった。

「練習は大変ですけど目標があるから、遊びたいというよりも私たちは踊りたい。踊ることがみんなの遊びみたいな感覚です。今の目標は12月の全日本チアダンス選手権でチャンピオンになることです!」

夢に向かって進んでいる2人の輝く笑顔は、とても素敵だった。

「いつだって人は変われる」

それは、劣等感にさいなまれていた教師が、生徒とともに歩んできた道のりで学んだことだった。

「私なんてダメだわ〜って、20代の頃は思っていたんです。教師は辞めたいと思っていた。(生徒が)平気で万引きはするし、20代の小娘(の教師)には手に負えなかった。劣等生の教師が、運や奇跡を呼んで生徒と一緒に巻き返していったんです。人の力を借りて、生徒の力を引き出して、つかんだ全米制覇でした」

高校生活が3年で終わっても、人生はまだまだ続く。

福井商業高校チアリーダー部JETSは、人間形成と、目標を抱いて進むことの大切さを、私たちに教えてくれる。(終わり)

(激励に訪れた箕面自由学園チアリーダー部と記念撮影)

福井商業チアリーダー部JETSの第1話はこちら>>

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